同名の小説を原作にした名作アニメ。
子供の頃に観た時は何も感じなかったけど、大人になってから再度観てみたら印象が変わった。
祖母からの贈り物を迷惑そうにしていた孫娘と送った側の祖母については、一方的に孫娘が悪いイメージがあったけど、実は祖母が迷惑がられている事を分かってやっているフシがあります。
他にも子供の頃には気付かなかった裏設定のようなものをいくつか発見できました。
当記事内で使用している作品の場面写真は、スタジオジブリが公式に無料配布している画像です。
※引用元URL:https://www.ghibli.jp/works/majo/
アニメ版『魔女の宅急便』あらすじ | 思春期少女の魔女修行
魔女の血を引く少女のキキは昔からの伝統に従い、13歳の満月の夜に父母の元を離れて1年間の修行の旅に出発。
海辺の大きな街を修行の地に選んだ彼女は、パン屋を営む親切な夫婦の好意で空き部屋を間借りして、唯一の特技である飛行能力を生かした宅急便の仕事を始める。
【見どころ】フクオ&おソノさん夫婦が優しくて良い!
- 魔女も交通ルールを守らないと、お巡りさんに叱られる
- キキとウルスラは同じ声優(高山みなみ)が担当
- この作品は観る人の世代によって受ける印象が変わる
※キキ目線、ウルスラ目線、おソノさん目線・・・
【登場人物 / キャスト】ウルスラが誰かに似ている気がする
感想(ネタバレ含む)子供目線と大人目線で印象が変わる!?
1989年に公開されたジブリ作品。
かれこれ30年以上前の作品なのに、全然色あせない名作ですね。
私自身は子供の頃に何度か観ているのだけど、大人になってから観たのは初めて。
改めて鑑賞してみた感想は、やはり子供の頃とは違う目線で観てしまうという事。
オープニングのシーンで、キキのお母さんの店を訪れていたおばあさんはリウマチの薬を求めてやって来た客であった事を初めて知った。
子供時代に観た時は、おばあさんは遊びに来たご近所さんという認識しかなかった。
キキのお父さんは普通の人間だけど、お母さんは魔女。
自宅に店舗を構えていて、魔女の秘薬を販売している感じでしょうか。
それとも無料で希望者に配っているだけなのかな!?
もう一つ気になったのは修行の地を定めてホウキに乗って街に降り立ったキキが、お巡りさんに魔女でも交通ルールを守る必要があるとお説教されていたシーン。
トンボの助けが無かったら、違反切符を切られていたかも!?
子供目線ではどうでも良い事だけど、大人目線で観ると変な部分が気になってしまう(笑)
キキが空き部屋を借りて居候させてもらう事になるパン屋を営む夫婦。
無口だけど気の優しいパン職人のご主人と、妊娠中の妻おソノさん。
ここでもまた大人目線で気になる事が発生!
おソノさん、余計なお世話かも知れないけどコーヒーに含まれるカフェインは胎児に悪影響を及ぼす可能性があるから、なるべく控えた方が・・・
普通に瓶入りの粉末インスタントコーヒーを飲んでいるけど、大丈夫なのかな!?
調べてみると過剰摂取が良くないというだけで1日に2~3杯なら問題はないそうな。
子供なら気にしないどうでも良い事にツッコミを入れるようになってしまった自分の変化に驚きを隠せない今日この頃。
私の心はすっかり汚れてしまったようです。
いちいちツッコミを入れずに純粋に観賞しなさいよ。
絵描きのウルスラが誰かに似ている・・・
『魔女の宅急便』において、仕事が上手くいかずに落ち込んでしまったキキを励まし立ち直らせる存在がウルスラという女性。
彼女は絵描きを目指して修行中の18歳。
キキ(13歳)よりも5歳年上のお姉さんですね。
キキが仕事中にトラブルを起こした縁で知り合って友達になったのだけど、思春期真っただ中のキキの心には年齢が近いウルスラお姉さんの言葉がよく刺さったようです。
おソノさんの年齢は20台中盤くらいで、キキとは一回り違う大人。
数年前に自分と同じ悩みを経験している、年齢が近いウルスラの言葉の方が参考になりますよね。
キキとウルスラの声優は、両方とも高山みなみさんが担当しています。
プロの声優さんなので、さすがに声の使い分けが素晴らしくて気付かない人が多いのではないでしょうか。
私ですか?
気付く訳ないじゃないですか(笑)
同じ声優さんが担当している意味は、ウルスラという女性は数年後のキキを反映したような存在というメッセージ性が込められているのかも知れませんな。
そんな事よりも、ウルスラは誰かに似ている気がする。
『となりのトトロ』のメイが大人になったらウルスラのような感じに成長するのかも。
よくみると、サツキもキキに似ていますね。
関連記事 『となりのトトロ』あらすじ・感想
ニシンとカボチャのパイって美味しいの!?
作中に出てくる「ニシンとカボチャのパイ」って、美味しいのでしょうか?
イギリスのコーンウォールという地方の実在する名物料理で、材料はニシン・かぼちゃ・卵・ジャガイモ・玉ねぎなどをホワイトソースでまろやかに味付けして、全体をパイで包んで仕上げる料理だそうな。
ニシンとかぼちゃだけでは味の想像がつかない料理だけど、ジャガイモやホワイトソースというキーワードが出てきた時点で、何となく美味しそうな気がする。
キキにこの料理を孫の為に配達するように依頼した心優しい老婦人。
しかし配達先で、
「私このパイ嫌いなのよね。」
という孫の衝撃の一言が空気を一瞬で凍り付かせてしまう。
何やねん、この孫は。
せっかくおばあさんが作ってくれたのに。
怒るで、しかし!!
なにやら激怒しているペンギンと同じ気持ちがキキの心にも芽生えたかも知れないけど、代金を受け取って宅急便の仕事をしている以上は相手に感謝される事ばかりではないという社会の厳しさを彼女が学んだ瞬間でもありました。
宮崎駿監督が後のコメントで、これはキキにとっての社会勉強の一環である的な事を言っています。
子供目線なら上の方で激怒している変なペンギンと同じ気持ちになると思うのだけど、孫は事前におばあさんに「要らない」ということを伝えていた事実がある。
これは大人目線で考えると、孫のために自己満足で料理を贈る困ったおばあちゃんという事になるのかな。
いわゆる「ありがた迷惑な贈り物」ですな。
老婦人にとって「ニシンとカボチャのパイ」は可愛い孫娘との接点になるものなので、要らないと言われても、そう簡単には贈るのをやめられない重要アイテムなのかも知れない。
老婦人は確信犯でやっている気がする。
そして孫娘の両親のどちらかが老婦人の子に当たるはずだけど、恐らくは離れて暮らしている祖母と孫の接点になる事が分かっているので、母親に料理を贈るのをやめて欲しいとはあえて伝えていないとも考えられる。
孫娘もいずれ社会勉強を重ねて成長したら、あの時のおばあちゃんの気持ちが分かるようになると思います。
あと、孫と祖母の間に挟まれた中間管理職的な親の立場も理解できるようになるでしょう。
社会勉強といえば、親元から旅立ったばかりのキキが上空で遭遇した先輩魔女。
彼女は1年の修行を終えて、もうすぐ故郷に帰る時期でした。
先輩も修行中は色々な苦労があったみたいだけど、自分は占いが出来るのでその特技が役に立ったとの事。
まさに芸は身を助けるというやつですな。
ところで、先輩魔女が自分が住んでいる町だと言って降りて行った場所は・・・
いわゆる大人の歓楽街がモデルになっているそうな。
詳しい事は分からないし想像の域を出ないけど、宮崎駿監督はこのシーンにも何かしらのメッセージを隠しているのかも知れないですね。
『魔女の宅急便』の原作小説を読めば映画の続きが判明する
この作品の原作小説は6巻が最終話となっていて、アニメで描かれたのは1巻の内容のみ。
つまり物語全体の6分の1に過ぎないという訳です。
13歳の少女時代からスタートして、最終的に大人に成長したキキがどうなったのかまでが全6巻で描かれます。
紙書籍の単行本や文庫本が出版されていますが、個人的には電子書籍が便利でオススメ。
『魔女の宅急便』は小芝風花主演で実写版が制作されていますが、この作品はアニメのリメイクではなくて原作小説を基にしているので、アニメのイメージとは大きく違います。
関連記事 実写版『魔女の宅急便』あらすじ・感想
『魔女の宅急便』をはじめとしてジブリ作品は動画配信サービスでは取り扱っていないので、現在のところ視聴するにはDVDをレンタルするか購入するしか鑑賞する手段はありません。