
『海よりもまだ深く』あらすじ
過去に1度だけ文学賞を受賞しただけの売れない小説家の良多は“取材のため”と言い訳をしながら現在は探偵事務所に勤めている。
ある日、台風の接近により、別れた妻と息子と共に母親が住む団地で一晩を過ごす事に。
そこで元妻や息子の近況を聞き、だらしない生活を送っていた良多はようやく自分の人生を見つめ直す。
【見どころ】プライドが高いだけのダメ人間・良多
阿部寛がだらしないダメ人間を自然に演じている。
過去の栄光にすがりプライドが邪魔をして前に進めない良多は、新たな人生を歩もうとしている元妻や息子を見てようやく目が覚める。
【主要登場人物 / キャスト】阿部寛ならではの役柄
感想(ネタバレ含む)プライドが高いだけのダメ人間
若い頃に1度文学賞を受賞しただけで、そこからは全く売れない自称小説家。
いわゆる一発屋というやつですね。
主人公の良多は母親の家のタンスを勝手にあさったりして金目の物を探す等、なかなかのクズ要素を兼ね備えている男。
しかも離婚した元妻に支払う息子の養育費も滞納気味。
探偵事務所で働いているのだけど、金が手に入ればギャンブルにつぎ込むダメ人間と来たものですよ。
さらに探偵の立場を利用して、ルールに反するお小遣い稼ぎまでしている始末。
子供から見たら、絶対になっちゃいけない大人の典型例。
ダメ人間だけど、演じているのが阿部寛だからか何故か憎めないキャラなのが不思議。
新作の執筆が進まない原因
本人は小説でまた一花咲かせたくて頑張っているつもりなのだけど、なかなか執筆が進まない様子。
一番の原因は精神面でしょうかね。
未練タラタラの元妻に新しい恋人ができて気になって仕方がなく、さらに元妻が結婚してしまえば父親想いの息子とも会えなくなるという危機的状況。
私生活で心配事があり過ぎて小説を書いている場合ではない良多。
「簡単になりたい大人になれると思ったら大間違いだぞ!」
作中で気になる言葉が色々と出てくるけど、人生が上手く行っていない人には一番心にグサッと刺さるのがこれではないでしょうか。
とはいえ全て自分が招いた状況なので、ダメ人間の良多の場合は自業自得なんですけどね。
良多のセリフだけど、ただ開き直っているようにしか聞こえないのが悲しい。
なりたい大人になれた人なんて。世の中にほとんどいないのではないでしょうか。
理想と現実のギャップに苦しんでいるのは自分だけじゃない。
100%を目指そうなんていう考えにまず無理がある。
生きていれば人生いろいろと不満点は出てくるけど、みんな妥協しながら折り合いを付けて頑張っているという事ですよ。
子供の頃に思い描いた理想の半分くらい実現できていれば、十分勝ち組だと思います。
人生の先輩からの心にしみるアドバイス
人生を前向きに生きられない良多はラストで前を向き始める雰囲気になるのだけど、恐らく彼に影響を与えたであろう名言が2つあります。
まずは母親からの一言。
「幸せってのはね、何かを諦めないと手に出来ないもんなのよ。」
過去に文学賞を受賞したといっても、それ以来ずっと鳴かず飛ばずだという事実を正面から受け止めて小説家という仕事に見切りをつける決断も大切なのではないか。
そのような事を言いたかったのだと思います。
世の中、「一挙両得」なんていう都合の良い状況にはなりません。
そして勤め先の探偵事務所代表の一言。
「誰かの過去になる勇気を持つのが、大人の男ってもんだよ。」
別れた妻にいつまでも未練を残してストーカーみたいな事はやめなさいと(笑)
これは本当に元妻の響子だって前に進めなくなるし、良多にとってもダメな事。
2人の言いたい事をまとめると、過去にしがみついていても何も始まらない。
元妻への“未練”や小説家としての“プライド”なんて物はさっさと捨てて、新たな人生を歩み出せという事でしょうかね。
そんな事が簡単に出来れば誰も苦しまないのだけど、前を向く努力は本当に大切。
あと必要なのはきっかけですよね。
そういう意味では、きっかけを与えてくれそうな人が周囲に多いので良多は恵まれていると思います。
本人はダメ人間だけど。
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阿部寛が“悩める男”を演じる作品でもう一つオススメなのが『恋妻家宮本』です。
優柔不断な男・宮本が、妻が隠していた離婚届を見つけて慌てふためく物語。
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