井浦新が演じる洞口という男が高い場所から飛び降りて重傷を負うシーンから始まり、そこから過去を振り返っている映像なのか、現在に続いている様子が描かれているのか分かりにくい映画です。
私の考察では退場に失敗した男が、自分が輝いていた学生時代に戻って思い出を作り直そうと旧友を訪ねた事から物語が始まる「現在進行形」の話だと思います。
洞口は幽霊ではないはず。
『ジ、エクストリーム、スキヤキ』あらすじ
フリーターの大川の元に大学時代の仲間・洞口が15年ぶりに現れる。
二人は何となく軽いノリで海に行くことになり、大川の彼女や洞口の元カノを巻き込んだ旅が始まった。
【見どころ】洞口の目的は過去との決別!?
- 観ている間ずっとユルい感じが続くのが心地良い映画
- 洞口は過去の思い出を上書きしたかったのかも
- 大川にとっても今回の旅は何かのきっかけになったはず
【主要登場人物 / キャスト】洞口と大川の自然な会話が秀逸
感想(ネタバレ含む)忘れたい過去があっても、上手く抹消できない
冒頭シーンで洞口が高い場所から飛び降りるというショッキングな始まり方で、洞口の魂がこの世を去る前に幽霊として過去の友人と最後の思い出作りの旅に出るというファンタジー要素なのかと思わせておきながら、実は違う意図が持った演出だった気がする。
私は途中まで洞口が幽霊なのかも知れないと思っていたけど、観終わってからは「洞口は生きている」という感想に至った。
いわゆる演出側のミスリード(あえて誤った印象を持たせる)という手法ですな。
間違いなく洞口は自殺を図った訳ですが、落下してから意識を取り戻しているシーンが描かれていたので、おそらくこの世からの退場は叶わなかったのでしょう。
映画内でハッキリと描かれていないので考察の域を出ないですが、人生を終わらそうとして高い場所から飛び降りたものの生き延びてしまった洞口は、人生で一番輝いていた大学時代に友人だった大川を訪ねて新たにそこから人生を再スタートさせたかったのではないでしょうか。
つまり大学卒業以降の自分の人生に絶望していた洞口は、大学時代までの楽しい思い出からスタートしてそれ以降の人生を新たに楽しい思い出を作って上塗りしたかったのだと思いました。
死ぬことに失敗したので、生きるしかなくなった。
となれば作戦変更で、過去の嫌な思い出を抹消してしまおう。
そのために楽しかった大学時代に戻って、それ以降の人生を再スタートしよう!
洞口はそのように考えて、大川に人生をやり直すための手伝いをして欲しかったのかも知れない。
洞口と大川は同じ穴のムジナ
洞口が大川を訪ねたのは間違いなく過去の自分に戻るため。
15年ぶりに会った大川とはすぐに大学時代のような意味のない会話の応酬が始まったので、作戦は大成功と言えるのではないでしょうか。
この時の洞口にとって運が良かったのは、大川もまた人生を模索中だったという事。
大川にとっても洞口の訪問は自分の人生を前向きに進めるためのキッカケになったはず。
結局は似た者同士、類は友を呼ぶという事でしょうか。
洞口と一緒に小旅行に出かける事になった元恋人の今日子は普通に会社員として働いている。
独身だけど彼氏がいる。
なので洞口とヨリが戻るという事は決してなくて、過去のやり直しは出来ない。
洞口と大川だけなら大学卒業以降の人生を作り直すという考え方が通用するかも知れないけど、今日子は就職して新たに恋人を作ってしっかりと人生を歩んできたので過去は過去として正面から受け止めている。
過去に囚われて立ち止まっている二人と、未来を向いて人生を歩んでいる今日子。
※今日子も多少は過去に未練がある様子だったけど、中二病の男二人と違って現実的な考え方。
今日子は洞口が過去から抜け出せていないと指摘して、前を向いて歩んで行くように諭します。
こういう事を言ってくれる存在って有り難いですよね。
洞口は自分一人では踏み出せないから、誰かに背中を押して欲しかったのかな。
人生には忘れたい事もあるけど、そう簡単に忘れる事は出来ない。
それなら無理に忘れようとしなくてもいいと思う。
確定した事実である過去は消せない。
それならアプローチを変えて黒歴史を笑い話に変えてしまえば良い。
後は、もしかすると時間が解決してくれるかもしれない。
嫌な思い出も、放っておけばいつの間にか記憶の片隅で行方不明になっているかも。
人生に行き詰った時は洞口のように古い友人に会ったりして“一旦過去の自分に戻る”という行動が有効なのかもしれませんね。
映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』を配信しているサブスク
『ジ、エクストリーム、スキヤキ』は洞口が生きているのか幽霊なのかがハッキリとしない部分があって、映画では分からない部分が他にもいくつかあります。
だからと言って原作小説を読むと多少設定が違っていたり肝心な部分が曖昧にされていたりと、結局は映画版も小説版も最後には、観た人・読んだ人が自分で考察しないといけないという状況になります。
まあそこが楽しかったりするんですけどね。
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