『夢売るふたり』あらすじ・感想 | 夫に結婚詐欺をさせるドス黒い妻

火の不始末が原因で、経営していた店が丸焦げになってしまった市澤夫妻。

無理やり気持ちを切り替えて前向きにラーメン屋でバイトを始めた妻の里子
一方の夫である貫也は失意から立ち直れずに酒におぼれる日々。

こういう状況の時は、やはり女性の方が色々な意味で強いのでしょうかね。

『夢売るふたり』の詳細情報
  • 公開年  : 2012年
  • 上映時間 : 2時間 17分
  • 監督   : 西川美和
  • キャスト : 松たか子 / 阿部サダヲ / 田中麗奈 / 鈴木砂羽 / 安藤玉恵 / 江原由夏 / 木村多江 / やべきょうすけ / 大堀こういち / 倉科カナ / 伊勢谷友介 / 古舘寛治 / 小林勝也 / 香川照之 / 笑福亭鶴瓶 ほか

『夢売るふたり』あらすじ

二人で切り盛りしていた小料理屋を火事で失った夫婦が、店の再建資金を貯めるために結婚詐欺に手を染めていく。

【見どころ】闇深い妻とお人好し夫による結婚詐欺

  • 詐欺は夫が実行犯で、妻は裏で糸を引いている
  • 夫に実行役をやらせているのは、妻による復讐という側面がみられる
    ※夫はお人好しな上に浮気性。
  • 男性目線、女性目線、観る人によって印象が変わる

【登場人物 / キャスト】この作品の主役は妻の里子

  • 市澤里子(松たか子)
    小料理屋「いちざわ」の女将。
  • 市澤貫也(阿部サダヲ)
    里子の夫、「いちざわ」の大将で板前。
  • 棚橋咲月(田中麗奈)
    結婚について悩んでいる30代の独身女性。
  • 睦島玲子(鈴木砂羽)
    「いちざわ」の常連客。
  • 太田紀代(安藤玉恵)
    男運が悪い風俗嬢。
  • 皆川ひとみ(江原由夏)
    競技に人生を捧げてきたウェイトリフティング選手。
  • 木下滝子(木村多江)
    ハローワーク職員のシングルマザー。

感想(ネタバレ含む) 開き直った女は強い!結婚詐欺は、夫への復讐!?

貫也は板前なので料理屋に就職するのだけど、食材の扱いに納得できずに先輩と喧嘩になってクビになってしまう。
真面目な性格なので、少しでも傷んだ食材は客に出せないという自分の考え方を貫こうとして揉めてしまいます
自分の店なら好きにできたのに、こういうところが勤め人の辛い部分ですな。
長いものに巻かれるというか、ある程度の妥協が必要になるのが雇われの身というもの。

里子はラーメン屋でバイトを続けるけど、貫也は対照的にどんどんやさぐれていきます。
ある日、いつものように酔っぱらって駅のホームのベンチで寝ていると、自分の店の常連だった女性に再会して成り行きで大人の関係に。

おいも
おいも

どこまで落ちるんや、貫也。

貫也が一夜を共にした玲子は、不倫相手からの手切れ金を受け取って失意のどん底の状態。
そしてそのお金を貫也が借り受けて妻の元に戻るのだけど、知人に貸して貰ったと嘘をついた挙句にすぐに見抜かれて熱湯風呂の刑に処されてしまう(笑)

夫婦間の関係に変化が生じ始めたのは、この時点からだと思います。
自分は一生懸命バイトで生活費諸々を稼ぐために頑張っているのに、夫は浮気をして大金を持って帰ってきた。
妻にしてみれば「何しとんねんコイツ」という感じだけど、そこでふと考える里子。

この時に結婚詐欺で店の再建資金を稼ぐことを思いつく訳です。

女性は気持ちの切り替えが男性よりも早いとはいいますが、どうせ他の女と浮気をするならそれと引き換えにお金を手に入れたらいいという発想に至った妻。

ここから妻が脚本を書いて夫が実行犯となって、女性と親密な関係になった上でお金を引き出すという役割分担が生まれる。
開き直りというか、ただでは転ばない女の逞しさを感じますね。
そして、これは夫への復讐とも思えなくもない。

浮気は自分の欲望を満たすために自ら進んでやる行為だけど、お金の為とはいえ好きでもない相手とそういう事をするのはある意味では拷問に近いかも知れない。
熱湯風呂に続く第二の刑・無限浮気地獄(笑)

こういうのって、むしろイケメンよりも普通の人の方が向いている気がする。
若い頃は外見で相手を選ぶ傾向にあるけど、年齢を重ねると見た目よりも中身の方が重要になってくる。

つまらないイケメンよりも、自分に寄り添ってくれる普通の人の方が好まれるのは自然な流れですね。
そういう観点からすると、貫也は本当に適任。
見た目は普通だけど、もともと真面目な性格だから相手の親身になって悩み事を聞いてくれる。

相手の女性にしてみれば、そんな優しい相手から実はお金が必要なんだと言われると援助してあげたくなるのかも知れませんね。

とにかく騙す相手もみんな心にスキマがある人ばかりなので、あのせぇるすまんも狙っているかも知れない。

絶世の美女だけど三十路を超えても結婚できずにいるとか、スポーツに情熱を傾けて恋愛は二の次の人生を送って来たとか、男運が悪い風俗嬢とか、シングルマザーとか・・・
そんな彼女たちの心の隙間を食い物にして、貫也は里子の書いた脚本通りにお金を要求していく。

ココロにスキマがある人にセールスをかけるといえば、喪黒福造もこの手法で相手に近付くんだけど彼の場合はほぼ遊びでやっているだけ。
噂では喪黒さんのイメージは悪魔メフィストフェレスであると原作者が語っていたそうな。

この映画のタイトルの『夢売るふたり』の意味は、結婚願望のある女性達に近付いて夢を見させてから対価としてお金を受け取る結婚詐欺という商売をしているふたりという事でしょうか。

結婚という願いを叶えるようなそぶりを見せながら、最後はどん底に突き落とすという悪魔の所業。

やっている事は「笑うせぇるすまんの喪黒福造」とほとんど変わりません。

妻の里子が抱える心の闇

この作品のキモはやはり妻の里子が裏で糸を引いているという部分。
普通は結婚詐欺は単独犯のイメージだけど、実行犯とシナリオライターの二人がタッグを組んでしかも夫婦でやっているっていうんだから、タチの悪さも倍増。

自分と同じ女性を夫を使って騙すという、とんでもない悪女である里子の心の闇の根深さは底なしですよ。

これは里子による浮気をした夫への復讐も兼ねているのかも知れないというのと、本当に店の再建資金が必要だという事、後は他のサイトで見たこの映画のレビューの中に自分が受けた屈辱や絶望感を他の女性にも味わわせたいというドス黒い感情もあるのではないかという女性視点の感想。

もしこの作品の西川美和監督がそんな事を考えていたのなら、本当に女って恐ろしいですね。

女性目線という意味では、里子の自慰行為や生理用品を下着につけるシーンがあるのだけど、これは貫也とはセックスレスの関係である事を表現しているのではないかという話。

なるほど、そういう事か。

男目線で見ると「松たか子のお宝シーン満載やん、この映画。」
という浅い感じにしかならない。
本当になぜあのようなシーンがあるのかよく分からず、ただのお宝シーンだと思っていた(笑)

これは女性監督ならではですね。
そして女性目線でこの映画を観ると、男性とは違った印象で少し怖い気持ちになります。

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