サイレンキラーと呼ばれるその人物は現場に何の証拠も残さずに仕事を遂行し、関連する事件はどれも未解決のままとなっている。
そもそもの構図としては市川の旧友の石田が仕事を持って来て、それを請け負った市川が知り合いのヒットマンに依頼してターゲットを始末してもらうという流れ。
市川はただの仲介者でハードボイルドを気取った普通のオッサンなのだけど、裏社会でそれを知る者は誰一人いない。
『一度も撃ってません』あらすじ
裏の世界で伝説の殺し屋・サイレントキラーと呼ばれているものの、正体はリアリティを求めすぎるハードボイルド作家の市川。
自分が窓口となり本物のヒットマンに依頼し、その仕事の詳細を取材して小説を書くのが彼の日常。
【見どころ】裏の顔を持つ小説家がヒットマンに狙われる
- 市川はただの小説家で、裏の仕事は別の男に依頼している
- ヒットマン周雄(豊川悦司)が面白い
- 殺し屋の引退宣言でピンチに陥る市川
【登場人物 / キャスト】市川を狙うヒットマンにも秘密が・・・
感想(ネタバレ含む)凄腕の殺し屋の正体は売れない小説家
自分の存在を誰にも悟られない今西が本物のプロだというのもあるけど、市川が今西から仕事の一部始終を教えて貰って小説のネタにしているので、これを読んだ人たちが犯人以外に知りえないような内容を書いている市川を本物だと思っているという事。
自分で自分の首を絞めているように見える市川だけど、何度か警察に疑われた時に明確なアリバイがあったので逮捕される事は無かった。
そりゃそうでしょうね、実行犯は今西なんだから。
警察がどれだけ調べても証拠なんて出て来るはずがない。
今西への取材メモとかを見られたらヤバいけど、そこは上手く隠している模様。
ある意味で完璧なシステムが出来上がっています。
石田が市川に仕事を持ってくる → 市川が今西に依頼 → 今西が遂行!
市川はターゲットの行動調査までは自分で行います。
その後の事は今西に任せる。
一応、ただ仲介している訳ではなく探偵のような事もしているんですね。
それもこれも全部、小説のネタ収拾のため。
リアリティを求めるあまり現在のような形になったらしく、完全に頭がイカれたオッサンにしか見えない。
市川は売れる小説を書きたいのではなく、自分が書きたいものを書くという自己満足型。
石田という人物は元検事で、現役時代に不祥事を起こしてヤメ検になり弁護士として活動していたけど、またやらかして資格を剝奪された懲りない男。
検事を辞めた後に裏組織の顧問をやっている事が発覚して弁護士バッジを失くした後も、何かしら裏社会と繋がっていて時々市川に仕事を持ってくる。
政治家を強請っているジャーナリストや不動産詐欺師がターゲットになるのだけど、これは別に正義のためにやっているのではなくて自分達にとって都合が悪い人間を消しているだけの話。
この石田から仕事を請け負う事で、売れない小説家のはずの市川は結構な金を持っています。
でも表向きの生活は妻の年金が頼り。
さすがに妻に自分がやっている事を正直に話す事なんて出来ないですからね。
本物のヒットマンじゃないけど、市川がやっている事は他人をそそのかして行動させる教唆(きょうさ)という罪。
まあ今西が証拠を残さない本物のプロなので捕まらずに済んでいるけど。
逆に夫がヒットマンの仕事をしている事を知った上で支えている妻もいます。
『やっぱり契約破棄していいですか!?』の老ヒットマンの妻ペニー・オニール。
しかも夫が裏の仕事で稼いだ金で世界一周旅行を計画する強者。
世界は広いですね。
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今西が引退宣言、そして市川の身に危険が迫る!
ある日、石田が関係している組織の敵対勢力がヒットマンを雇ったという事が判明します。
元々のターゲットは石田だったけど、まず石田のバックに付いているヒットマンを始末する事に。
という訳で市川が命を狙われる事になります。
本当はただのオッサンなんですけどね。
しかしこうなった以上は先手を打って今西を動かして相手のヒットマンを倒したいところだけど、当の今西が恋人のために引退を宣言して大変な事になってしまった。
今西がいなかったら、市川はハードボイルドを気取っている変人以外の何者でもない。
そして同じ時期に、夫の行動に長年不信感を抱いていた妻が調査を開始。
ヒットマンに狙われると同時に、妻による夫の素行調査が始まった訳ですよ。
運というのは悪い方向に転び始めると、とことん行っちゃう時がありますから、こういうのを「年貢の納め時」というのでしょうね。
この映画は佐藤浩市と寛一郎の親子共演とか、同じシーンではないけど柄本明と柄本佑親子が出演していたり、今西役が妻夫木聡だったりと出演者が本当に豪華。
登場した時にすぐには分からなかったけど、相手方のヒットマンは豊川悦司。
この人は長髪のイメージしか無くて短髪が新鮮だった。
観る前のイメージでは全体的にふざけた感じのコメディなのかと思っていたけど、観る人を選ぶ大人向けの上品なコメディ映画です。
市川は終始ハードボイルドを気取っている。
低い声で話し、ピンチになっても動じない。
自分が狙われてると知ったシーンでは少し取り乱していたけど(笑)
そしてこの人は携帯電話を持っていない。
小説はパソコンを使って書くクセに、外での連絡手段は公衆電話。
これもこだわりのハードボイルドなのでしょうかね。
そもそもハードボイルドとは、どういう意味なのかという話ですよ。
【Hard-boiled】・・・しっかりと茹でた卵。
ハードボイルドとは「固ゆで卵」
・・・いや違うがな!
ハードボイルドな人とは客観的に物事を見るクールな雰囲気の人とか、そんな感じでしょうか。
常に自分で定めたルールに従って行動し、周りに流されない強固な意志を持つ人。
こういう人って大抵は周囲の人達から変人扱いされているイメージですね。
石田と同様に市川の50年来の旧友・ひかる役の桃井かおりも自由奔放な感じで良かった。
市川の妻に浮気相手と誤解されても、自分のペースを崩さないのは本人のイメージそのもの。
台本通りなのかアドリブかもよく分からないけど自然体過ぎる演技。
この作品は意図的に笑わそうとするシーンが無くて、所々でクスッと笑えるシーンがある静かなコメディですね。
万人受けする感じではないけど、好きな人は好きな感じの作品。
ツッコミどころは結構あるのだけど、そこはハードボイルドという事で。
映画『一度も撃ってません』を配信しているサブスク
『一度も撃ってません』は主演が石橋蓮司の大人向けコメディ映画。
動画配信サービスで観賞したい場合は、邦画を豊富に配信しているサブスクの「U-NEXT」や「Hulu」がオススメです。
サービス名 | 月額料金(税込) | 同時視聴できる端末数 | 無料お試し期間 |
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U-NEXT | 2,189円 | 4台 | 31日間 |
Hulu | 1,026円 | 4台 | ✕ |
『一度も撃ってません』と同じ阪本順治監督の作品で他にオススメなのは稲垣吾郎主演の『半世界』です。
中学生の息子との距離感に悩む父親を演じている吾郎さんが自然体でカッコイイ。
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