
『半世界』あらすじ
ある地方都市で炭焼き職人をしている39歳の男が、久しぶりに地元に戻ってきた幼馴染みと再会し人生を見つめ直していく。
現在の仕事や家族との関係、過去、そしてこれからの事・・・
【見どころ】旧友との再会で人生を見つめ直す
アラフォーの男三人が父親として、一人の男として、それぞれの人生を見つめ直す物語。
【登場人物 / キャスト】
感想(ネタバレ含む) | 親、友人、家族・・・人生とは
主人公は父の跡を継いで炭焼き職人になった男。
稲垣吾郎が演じるのは39歳の高村紘、妻と中学生の息子との三人家族。
普段は山奥の製炭所で黙々と一人で炭を作り続けている。
幼馴染みが8年ぶりに帰郷
ある日、仕事に向かう途中に中学校時代の幼馴染みの沖山瑛介の姿を見かけて声をかける。
久しぶりの再会にもかかわらず、なんだか様子がおかしい。
事情を聞いてみると自衛官を退官して実家に戻って来たらしく、しばらく放置していた家を掃除してまた住み始めるとの事。
瑛介の両親は既に他界しているみたいです。
その日の夜、もう一人の幼馴染みの清彦も加わり三人は瑛介が戻ってきた記念に鉱の家で酒を飲む事に。
田舎町で育った幼馴染みが大人になって再会するのって、いいですね。
同窓会のような大規模なものではなくて、三人だけの小さな飲み会。
そこに中学生の息子・明が帰宅するけど、来客にもそっけない態度で反抗期丸出し。
激高する鉱だけど、光彦からは父親として明とちゃんと向き合っていないと指摘されてしまう。
最初にこのシーンを見た時は、明は鉱と血の繋がっていない初乃の連れ子なのかと思ったけど実の親子。
母が再婚した男を父と認めない反抗期の中学生とかではなかった(笑)
正真正銘、鉱と明は血が繋がっている。
それにしては何だか余所余所しい感じ。
光彦の言う正面から向き合っていない、息子に対して無関心であるという部分が出ているのかも知れない。
どうやら鉱は仕事の製炭業の業績が芳しくないみたいで、息子の事に構っている余裕がなく初乃に明の事を任せっきり。
そういう父に対し、反抗期も手伝って現在のような感じになっている模様。
しかも明は学校の同級生たちに虐められているみたいで、初乃はそれに気付いているようだけど、鉱は「こんな田舎町でイジメなんてある訳ないと」真剣に話を聞こうとしない。
そりゃギクシャクしますわ。
イジメは都会とか田舎とかではなく、人間同士の問題なのに。
後日、三人で瑛介の家の掃除をしながら地元に戻って来た理由を聞いてみたけど、仕事を退職した事と離婚した事以外は話そうとしない。
様子を見る限りでは何か抱えているものが有りそうだけど、深くは聞こうとしない二人。
この辺が子供時代からの付き合いで何年経っても変わらない、話したくなったらそのうち自分から打ち明けるだろうという暗黙の信頼関係ですね。
これがまだ小学生だったら、相手の気持ちも考えずにどんな手を使ってでも聞き出そうとして喧嘩になるのがオチ。
そう考えると、みんないつのまにか大人になったという事なんでしょうか。
三人は元々この町の生まれで子供時代はずっと一緒に過ごした同級生。
鉱は亡くなった父の跡を継いで炭焼き職人、光彦も家業の中古車販売業を経営、唯一地元を出て自衛隊に入隊したのが瑛介だけど退官して戻ってきた。
現在の年齢は39歳、人生の折り返し地点に差し掛かろうというところ。
さらに詳しく掘り下げてみると、鉱には妻の初乃と息子の明がいる。
光彦は未だに独身。
瑛介は離婚した元妻との間に子供がいる。
アラフォー三人の現在の家族構成は、家庭持ち、独身、バツイチ(独身)。
光彦の場合は独身だけど両親や祖父母が健在で、一緒に仕事をしている。
鉱と瑛介は両親は他界。
鉱の仕事を手伝う瑛介
戻って来たきり家に引きこもり気味の瑛介を心配した鉱は、自分の仕事を手伝うように誘う。
山に入って木を伐採してトラックで運搬、その後に炭焼き場での作業。
「これを一人でやって来たのか・・・」
と予想以上の重労働に驚く瑛介。
鉱の仕事を手伝って瑛介は気持ちが多少晴れたみたいで、光彦も加わり三人でスナックで酒を飲んで盛り上がる。
今まで暗く沈んでいる感じだったけど、自衛隊時代の話を自分からしたりして明るさを取り戻したように見える瑛介。
最後は夜の海岸でおしくらまんじゅうをして戯れるアラフォーの男達。
子供と大人の大きな違いは酒でしょうか。
気分が沈んでいても酒の力を借りれば、無理やりにでも明るくなれる。
無理やりでもなんでも、こういう気晴らしって必要な気がします。
まあこの三人は十代の頃から隠れて飲んでいたみたいですけど。
心に余裕がない父と息子のすれ違い
ある日、警察署から出てくる鉱と明。
どうやら同級生達と万引きをして明が一人で全ての罪を被った様子。
明の考えでは「自分が一人で罪を背負って周囲の連中を庇ってやったから対等の関係になった」と、訳の分からない理屈を持っている。
世の中というものを色々な意味で知らない、思春期少年の屁理屈ですな。
父から「あいつらとは付き合うな」と言われても反発する明は、迎えに来た鉱の車には乗らずにバス停に向かう。
少し歩いたところで振り返ってみると、鉱はすでに車の中。
本当は自分にもっと関心を持って欲しいという心が透けて見えますが、鉱は取引先から契約を打ち切られてそれどころではない。
後日、明に対するイジメは続いていて、その現場に偶然通りかかった瑛介明を連れて自宅に戻る。
実は事前に鉱から明の事を頼まれていた瑛介。
父としてどう接して良いか分からず、助けを求めた形。
瑛介も離婚した妻との間に子供がいるので、人選としては最適かも知れない。
光彦は独身だし、ちょっと能天気なところもあるし。
食事をしながら、鉱の子供時代の事を明に話す瑛介。
よく父親(明の祖父)に殴られていた事や、学生時代に隠れて酒やたばこを吸っていた事、そして現在は炭焼き職人として必死に仕事をしている事などを話す。
明はこの話を聞いて、父親の知られざる一面を知り何を感じたのでしょう。
多感なお年頃ですからね。
半世界の意味とは?
「お前は世界を知らない」と瑛介が言うと、今度は鉱が「こっちも世界なんだよ」と反論。
40歳を目前にした男同士の、それぞれが経験してきた世界(人生)。
映画のタイトルの『半世界』の意味を自分なりに考えてみると、
・自分はまだ世界の表半分(片面)だけしか見ておらず裏面を知らない?
・人生80年として、まだ半分残っているという意味?
自分が知っている世界は本当に狭い範囲のものでしかない。
自衛隊員として世界中を回った瑛介の世界も、地元に残ってずっと炭焼き職人をしている鉱の世界も、どちらも一つの世界だし、まだ足りない物や知らない事だらけ。
とにかく自分が知っている事が全てではないという事。
そしてそれぞれが持つ世界(人生観)が微妙に重なり合って、影響を与え合っている。
その代表格が家族や友人関係だと思います。
昔から鉱と瑛介が喧嘩した時にいつも緩衝材になっていたのは光彦。
鉱と明の間に立って絶妙なバランスを保っているのは初乃。
誰かが誰かに影響を与えながら、この世界は成り立っているんですね。
自分の世界(半世界)と誰かの世界(半世界)が重なり合って一つの世界が出来る?
考えれば考えるほど、よく分からなくなってくる。
不器用な男達
なんだか色々と考えさせられる映画でした。
この作品の主人公は鉱を中心としたアラフォーの三人だと思うけど、実は明の成長物語としての側面があったようにも感じる。
「親の心子知らず」ということわざは初乃と明の関係には当てはまるけど、最初は鉱と明の間に当てはめるのが難しく、どちらかというと「子の心親知らず」状態だった。
瑛介に鉱が明の事で相談に乗ってもらったり、明が瑛介から父の子供時代の話を聞いて心境の変化が有ったり、お互いに関心が無い訳ではないという事が分かる。
ただ不器用なだけ。
瑛介のお陰で、明から見た鉱の印象は大きく変わった様子。
でも一番不器用なのは瑛介自身。
高村親子の世話を焼いている心の余裕なんて本当は無いはずなのに。
描いた人生になってる?
この作品のキャッチフレーズは「描いた人生になってる?」
そう質問されて即答で肯定できる人なんて、ほぼいないと思います。
例えば希望の会社に入社したまでは良かったけど「あれ?なんか違う・・・」
という感じになった人は多いはず。
しかしそれは表面しか知らずに入社したからであって、どんな会社にも多かれ少なかれ裏面がある。
いわゆる理想と現実のギャップというやつですね。
こういうのも半世界なんでしょうかね。
世の中なんでもそんなものですよ、思い通りにいかない方が普通。
神さまじゃないんだから。
『半世界』を視聴できる動画配信サービス
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