モデルとなった松平家といえば名門のはずだけど、調べてみたら元は結城氏という大名で松平姓に改めたそうな。
始祖は結城秀康という人で、なんと徳川家康の次男。
この人は色々あって、豊臣秀吉の養子となった後に今度は結城氏の養子に出された。
それはそうと、どうしてこんなに頻繁に国替えをさせられていたのでしょうか。
国替えのペースは7~8年に一度程度。
外様大名は業務提携を結んでいる外部企業、松平家のような元から徳川の家来だった大名は幕府の社員扱いなので定期的な配置転換があるといった感じでしょうか。
『引っ越し大名!』あらすじ
江戸時代前期、国替えに伴い藩の引っ越し奉行に任命された人付き合いの苦手な男が、仲間たちの助けにより準備を進めて行く。
頻繁に国替えを命じられていた大名・松平直矩の実話をモチーフにした作品。
【見どころ】実話が原作の引っ越し騒動
- 問題なく引っ越しができる良い案が浮かばなければ切腹!
- 家臣のリストラを上手く進めなければ切腹!
- 商人から資金を調達できなければ切腹!
【登場人物 / キャスト】引っ越し大名は実在の人物
感想(ネタバレ含む)引っ越し大名の部下たちは本当に大変
家康の長男は信長に切腹させられたので、本来ならば秀康が徳川幕府の二代将軍になっていてもおかしくなかったのに、幼少期は家康から冷遇されていた可哀そうな人物。
関ケ原の合戦の後に越前に広大な領地を貰ったという記録があるので力量は認められていたみたいだけど、後継者にするには豊臣の養子を経ているとか、生母の立場とか色々と問題があったそうです。
子孫の松平直矩も家康の血を引いているのに、幕府からの扱いが良くない残念な人。
親藩は徳川家の親戚、譜代大名は家康の家来だった武将が大名になった家柄、外様はその他の大名家。
松平家は、なんだかよく分からなけど譜代扱い。
外様大名は江戸などの重要な地域から離れた場所に比較的大きめの領地を貰っていて、身内の立場である譜代大名は小規模な領地しか与えられていないイメージ。
島津などの外様には、「大きな領地を与えるから国(幕府)の仕事に口出しせずに黙っておけ。」的な意味合いがあったのかも知れませんね。
100%かどうかは分からないけど、外様は幕府の仕事には就けなかったそうです。
その代わり自分の領地では国王のような存在。
親藩は御三家とかの特別な存在なので、こちらの関係者も幕府の仕事には就けない。
親戚という立場を利用して悪事を働く輩が出てくることを警戒したのでしょうか。
逆に特別過ぎて幕府の仕事をさせるには恐れ多いとか、そんな理由なのかも!?
という訳で幕府の仕事には譜代大名が就いていたみたいだけど、元々徳川の家来たちなので当然といえば当然ですね。
松平直矩も譜代大名なので幕府の命令には逆らえない。
幕府から引っ越せと命じられると、
「ハイ喜んで。」と言わざるを得ない悲しい立場。
外様大名同士の領地を近くに配置すると結託して反乱を起こされた時に厄介なので、外様藩の間に譜代大名の領地を挟んで監視していたとか。
ある意味合理的だけど、当事者にしてみればたまったものじゃないですよね。
反乱を抑止するための手段として参勤交代と国替えという制度があった訳ですが、外様大名に関しては国替えがほとんど無かったそうで、逆に頻繁に命じられていたのが譜代大名。
幕府の仕事に就いているサラリーマンみたいな立場なので文句も言いにくい。
どちらかというと、幕府は譜代より外様大名の方に気を使っていたのかも知れない。
引きこもり侍が、引っ越し奉行に就任
姫路藩主・松平直矩は生涯に七度も国替えを命じられた実在の大名。
といっても主人公はこのお殿様ではなくて、星野源が演じる片桐春之介という人物。
人付き合いが苦手で書庫番を天職としている引きこもり侍が、突然引っ越し奉行に命じられた。
今までの仕事は図書館の管理人みたいな感じ。
姫路から豊後日田(現在の大分県)への国替えを命じられ、15万石から7万石に減封されるとの事。
そもそも1石は成人男性が消費する一年分の米の量だそうで、15万人分の米を賄える経済力があったのに一気に半減してしまうのはキツイですね。
しかも約2000人の家来の何割かはリストラをする必要がある。
誰を辞めさせるか選ぶのも春之助の役割。
さらに引越しに伴う資金を商人から借りるのも奉行の仕事。
春之助は完全に面倒事を押し付けられてしまった。
奉行に命じられて数日後、城に呼び出されて家老たちから良い案は浮かんだかと聞かれても全く良い考えが出てこなくて、なぜか切腹を命じられる。
良いアイデアが浮かばないだけで切腹って(笑)
上層部は責任を果たせない部下には容赦なく「腹を切れ」と命じるサディスト揃い。
武士道だか何だか知らないけど、とにかく何かあると腹を切らされるのは気の毒ですね。
実際には事なきを得たんですが。
何も分からないところからのスタートだったけど、引っ越し奉行の前任者の娘の協力を得て、幼馴染みでもある同僚の侍も色々と助けてくれたので何とか準備を進める事が出来たけど、すべてが順調という訳ではないという事ですよ。
リストラ対象の人達の説得や資金調達も大変だけど、どさくさに紛れて悪巧みをする身内の存在。
絶対に一人はいるんですよ、こんな奴が。
しかもこの件には幕府の要人の影がチラホラ。
殿様は思い当たるフシがある様子。
春之助が担当した引越しは今回だけではなく何度か続きます。
経験が無くて出来ないと思う事でも、行動してみれば案外やれるものですね。
譜代大名は中間管理職のサラリーマン!?
莫大な石高を持つ豊かな外様大名と比較して、多くても15万石程度の譜代大名は参勤交代と国替えの二重苦で慢性的に財政難。
その上、幕府から無理難題を押し付けられても逆らえない。
完全にいいように使われていますね。
大名といえど、譜代は完全にサラリーマンのような扱い。
本部に逆らえない雇われ店長的な役割。
そんな店長の元で働く部下達はもっと大変。
引っ越しを命じられても殿様は部下に任せているだけなので普段の生活は変わらないかもしれないけど、部下の侍たちはリストラ対象になったり、私財を処分したり、切腹させられそうになったり。
店長も大変だけど、課長とか係長とかの一般の従業員に近い管理職が一番大変ですよね。
現代のサラリーマンは切腹の危険性がないのがせめてもの救い。
当時は、切腹という行為は名誉な事であるという認識。
平和な江戸時代は、よほどの不始末が無い限りは切腹を命じられることはなかったそうだけど、年寄り連中はとりあえず何かあると腹を切らせようとするんですよ。
気持ちを引き締めさせるパフォーマンスのつもりでギリギリのところでやめさせることもあったとか。
「おぬしの覚悟、しかと受け取った。ぶわっはっは。」
とか言って去っていく家老の能天気な後姿を見て、殺意を抱く若侍という構図ですね。
映画『引っ越し大名!』を配信しているサブスク
テレビで放送している連続ドラマの時代劇を観るのは年配の人が多いかも知れませんが、江戸時代や戦国時代を舞台にした映画は現代ドラマにはない雰囲気が楽しめて面白いですよ。
本記事の『引っ越し大名!』以外に、小栗旬主演の『信長協奏曲』もオススメ。
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この作品の原作者は『超高速!参勤交代』シリーズの土橋章宏という人。
小説・脚本家にして放送作家でもあり、テレビドラマ制作にも協力しているヤリ手です。
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