第二次大戦末期の広島県呉市を舞台にしたアニメ映画。
私は今まで戦争関連作品を敬遠していたのですが他の作品と違って『この世界の片隅に』は、悲しい現実を感じながらも主人公すずのほんわかとした雰囲気が優しい気持ちにさせて和ませてくれるので、観ていて暗い気持ちにはならなかった。
アニメだからという事もあるのかも知れないし、主人公役の声優のんの声の波長が自分に合っていたのかも知れない。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』あらすじ
1944年(昭和19年)に広島市から軍港のある呉市の北条家に嫁いだ18歳のすず。
戦況が悪化し物資も不足する中で、周囲の人々と協力しながら毎日を乗り越えていく物語。
【見どころ】戦時中の人々の暮らし
- 広島への原爆投下前と後の時代が描かれる
- 食料や物資が足りなくても、明るく前向きに助け合って生きる人達
- 径子姉さんは口調が厳しいけど根は優しい
【登場人物/キャスト】ほんわかした雰囲気のすずが魅力的
感想(ネタバレ含む)ほんわか天然キャラの主人公すず
この作品が制作される前にも、2011年に北川景子主演のスペシャルドラマ、さらに2018年に松本穂香主演の連続ドラマがテレビ放送されていた事を私は知らなんだ(笑)
しかも夫の周作役がそれぞれ小出恵介・松坂桃李というなかなかに豪華なキャスト陣。
・・・なのに、知らなんだ。
今回私が観た作品は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』というタイトル。
2016年に公開された『この世界の片隅に』に約40分の追加シーンを加えたロングバージョン。
2016年版を観ていないので、どのシーンが追加されたのかは分かりません。
両方を観た人の話では、それぞれに印象が違う作品だそうです。
当時余分な場面がカットされたのか、それとも後になって新規で描いたシーンを追加したということでしょうか、どちらにしてもアニメ作品で約40分の追加は凄いですね。
終戦の1年前に当たる1944年に広島市内から呉市に嫁いだ、すず。
あの時代は本人の意思とは関係なく親同士が勝手に決めて結婚した夫婦も多かったみたいで、当人たちもそれが普通だという価値観を持っていたそうな。
特に当時は今以上に女性の地位が低くて、女性は炊事洗濯の他に跡取りを生む役割を求められて、それさえも女性たちは当然の事と受け止めていた風潮がある。
こういう価値観・考え方は戦国時代と変わらないような気がします。
実際に戦争中なので人間の命の灯がいつ消えてもおかしくなかった状況を鑑みれば、若い男子は長男や次男という事に関係なく健康であれば戦地に送られていたので、一人でも多くの子孫を残して家の存続を最優先に考えるというのは分からないでもないけど、平和な現在とはギャップがあり過ぎて複雑な気持ちになってしまいます。
でも、すずが嫁いだ北条家は夫の周作や義両親は優しい人でラッキーでしたね。
出戻りで娘と共に帰ってきた小姑の径子おねえさんは嫁いびりをしていたけど、天然キャラのすずには一切の嫌味が通用しない(笑)
良い意味で鈍感なホンワカ系の人って、ちょっと得ですな。
まあ、径子おねえさんも基本的に悪い人ではないのですがね。
ちなみに径子さんの独身時代は流行の先端を行く“モガ(モダンガール)”だったそうです。
しかも結婚は、当時では珍しい恋愛結婚。
さすがは、お姉さん。
残念ながら旦那さんとは死別したそうで、跡取りの長男を残して嫁ぎ先から離縁して戻ってきた。
すずに対して厳しい態度が目立つけど、根が良い人なのは見ていてわかります。
最終的にはいつもフォローしてくれますからね。
戦争中の生活は大変
作品内でも描かれていたけど戦時中の生活は本当に大変だったみたいで、国から配給される物資も日に日に減って、道端の雑草でさえも貴重な食糧。
しかも今と違って食品の保存にも一苦労。
冷蔵庫は氷を使ったタイプの物がそれほど性能が良かったわけではなく、井戸の中に入れておくのが一番効率的だったのだとか。
冷蔵庫があった家庭も少なかったと思います。
水道に関しては戦後の昭和30年代以降に急速に普及したみたいで、戦時中はまだ川や井戸から水を汲んできて大きな瓶に保存しておくのが一般的。
現代の日本は蛇口からすぐに奇麗で安全な水が出てくるけど、当時は水の確保も重労働。
これが一番キツかったかも知れない。
米の研ぎ汁を捨てずに床拭きに使ったりとか、とにかく一滴たりとも無駄にしないように工夫していたという今では考えられない時代。
着るものも、古着を裁断して縫い合わせて・・・
大量生産・大量消費とは真逆の時代。
昔の人々の苦労があって、今の我々の便利な暮らしがある。
そう考えると、資源の無駄遣いはしないように心掛けないと。
戦争を題材にした作品は暗い雰囲気で色々と考えさせられるような内容が多くて、観終わった後に複雑な気持ちになるものが多い気がするのだけど、この作品はある意味ハッピーエンドな感じで終わる。
米軍の爆撃で家が破壊されたり、すずが爆発に巻き込まれて大怪我をしたり、呉から少し離れた広島市内に原爆が落とされたりという悲しい現実も描かれているのだけど、最後はみんな前向きに笑顔で終了。
とにかく登場人物がみんな精神的に強い。
ウジウジ泣いていてもどうにもならないという事が分かっているので、もう前を向いて歩きだすしかないという事ですね。
これが実に良いイメージ。
こういう作品こそ、子供に観て欲しい。
遊郭が登場する場面があるけど、遊女のリンとすずの会話だって自分の居場所を見つけて一生懸命生きるという前向きな内容だし、こういう場所もあったという教育的な視点から遊郭だって歴史の遺物として上手くぼかして説明すれば何とかなるのではないでしょうか。
・・・ならないかな?
この作品はNHKでは地上波で過去に放送済みだけど、民放では難しいのですかね。
なんなら各局持ち回りで毎年放送して欲しいくらいの傑作だと思います。
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