映画のタイトルと同名の小説が原作となっているミステリー作品。
主人公の津田はかつて直木賞を受賞した経験のある小説家だったけど、ある作品の内容がフィクション(作り話)ではなく事実に基づく内容だったため大問題になって業界から姿を消したという人物。
そんな前科を持つ津田が数年ぶりに書き始めた新作を担当編集者が読んでいるところから物語が始まります。
映画自体はフィクション作品だけど、作中で津田が語っている話はどこまでが真実なのか、それとも全部ウソなのか。
津田は天才作家だけどダメ人間の要素もあって、彼の何を信用して良いのか全く分からない。
『鳩の撃退法』あらすじ
東京のとあるバーで、かつて天才小説家と呼ばれた津田の執筆途中の原稿を読んでいる担当編集者の鳥飼。
富山の小さな街で起こった出来事が綴られていたが、津田の“前科”から、これが本当にフィクションなのかを検証するために舞台となった場所を訪れてみると、衝撃の事実が判明する。
【見どころ】実体験を小説にする男
- 実話なのか創作なのかを曖昧にして話す主人公
- 津田を売らなかった散髪屋店主の男気!
- 秀吉と倉田が二人一緒にいる場面を見た事がない主人公(津田)
【登場人物 / キャスト】倉田は実在するのか・・・
感想(ネタバレ含む)事実に基づいて小説を書いたのは、自分の安全を確保するため!?
過去と現在の映像が交差する描き方なので、最初はよく分からなかった。
でも途中からは「過去と現在」であると同時に、「フィクションと真実」の交差である事が分かる。
作り話なのか真実を基にしたノンフィクションなのか分からない内容の小説を書く男というのが、津田という小説家。
この小説が津田の実体験を基にしているのは間違いないのだけど、自分自身が経験したこと以外の部分は彼が客観的事実から導き出した推測に過ぎない。
つまり実際に会った事がない人物の描写については、あくまで作り話という形になっている。
とはいえ津田の推理は天才的で、断片的なネタを集めて自然な形に繋ぎ合わせた結果、当たらずも遠からず的なところに行き着いてしまう。
そうなってくると、小説に書かれている内容のほぼノンフィクションみたいな感じになる訳です。
現在の津田は東京でバーテンダーをしています。
その店で編集者に新作を読ませているのだけど、内容がダムの底で見つかった男女の遺体や裏社会のドンの存在、そしてニセ札が登場したりと非常にヤバい内容。
津田は過去にほぼノンフィクションの小説を書いて当事者から訴訟を起こされた前科があるので、担当編集者の鳥飼が舞台となっている街を訪れて確認してみると、床屋や行きつけのカフェは実在するし、小説に登場する店員にも遭遇。
という事はどう考えても内容が真実としか思えない。
しかも現在働いているバーも富山の床屋に紹介されて行きついたという、現在進行形でヤバい状況が継続しているの可能性大。
津田の目的は、裏社会のドンである倉田に命を狙われているので小説を出版する事で真実を世に広めて自分の身の安全を確保する事なのかな!?
自分がこの世を去る事になったとしたら、世間は倉田の仕業と思うはずだから抑止力として何としても出版にこぎつけたいのかも知れない。
ちなみに津田が倉田から狙われるようになった理由は、倉田の偽札を使ったから。
倉田が何かの目的で偽札をどこかに発注して、ひとまず届いた現物を信頼している秀吉に受け取ってもらった後に自分が確保しようと思っていたら、秀吉が店の仕事を急に休んだせいで偽札の行方が分からなくなってしまった。
そして小さい街で回り回って津田の手元に、という事です。
幸地秀吉と倉田健次郎は同一人物疑惑
津田が書いた小説の内容は実体験(真実)と創作(事実を繋ぎ合わせた推測)を織り交ぜた内容だけど、倉田の人物像は津田の想像の産物でしかない。
津田は倉田という名前は耳にしているのだけど、直接姿を見た事も電話を通じて声を聞いた事も無い。
周囲の人物が倉田と電話しているのを見たり、子分を通じて倉田からメッセージを受け取ったり、自分の店に倉田が来たという後日談を聞いただけ。
街では存在そのものが都市伝説であるという噂まである。
映画では豊川悦司が倉田を演じていて、実在の人物っぽく描かれていました。
でも津田の小説に出てくる倉田はあくまで想像上の人物。
豊川悦司(が演じている倉田)の容姿も津田が生み出したイメージであり、本物の倉田の容姿を津田は知らない。
もしかすると、幸地秀吉と倉田って同一人物だったりして!?
津田は秀吉とは行きつけのカフェで実際に会っているけど、水商売をしている人間である事や妻と娘がいる事以外は何も知らない。
秀吉と倉田のやり取りのシーンも津田の想像に過ぎないので、倉田から荷物(ニセ札)が届くから受け取って保管するように言われていたシーンも本当かどうか分からない。
秀吉自身が倉田だとすると、単に店に荷物が届くのが分かっていただけの話。
まさか給料の前借りを願い出ていた従業員の女の子が偽札を間違って持ち出すとは思わなかった。
本当は荷物を自分で受け取る予定だったけど、妻に妊娠を告げられて動揺して仕事を休んだのがアダになったという可能性がある。
といっても、この件は津田は知る由が無いので、あくまで小説のストーリーとして想像しただけ。
車の後部座席に倉田と秀吉が並んで乗っているというのも、あくまで津田の推測(小説内の描写)ですからね。
実際は秀吉が一人で座っているのかも知れない。
幸地秀吉という人物は表向きはバーのマスターでもう一つの顔が裏社会のドンというのが真相なのか、それとも本当に倉田健次郎という人物が別に存在しているのか・・・。
トヨエツが演じている倉田は津田のイメージ像でしかないというのが、謎を深める要因。
そもそも津田は彼の姿や声を知らないのだから。
まあ映画を観た上で考えた、私の勝手な想像ですけどね。
小説に書かれた事実とフィクション
津田は流れついた富山でデリヘルのドライバーをしていて、偶然にも手に入れた金が偽札と知らずに使ってしまい本来の持ち主である倉田から狙われる事になり東京に逃げた、というのが事実。
他の事柄については津田の推測の域を出ない。
この作品は、一度観ただけでは複雑すぎて全てを把握するのは困難。
原作小説は上下巻に別れていてかなりのボリュームがあるので、そもそも映画だけで全てを知る事は出来ないと思います。
この映画は鑑賞するだけなら面白かったけど、色々と考察すると深みにハマって非常に疲れる作品。
ネット上で他の人のレビューを見てみると、小説を読んでも分からない部分があるといった感じなので、ある意味スゴイ作品ですね。
最後に映画の中で思いっきりツッコミたい部分が一つだけあった。
藤原竜也が演じている津田が、倉田の子分たちから追われて逃げるシーン。
津田は軽くランニングしている感じでゆっくり走っていて、逆に子分たちは全力疾走なのに何で追いつけないんや!?
映画『鳩の撃退法』を配信しているサブスク
藤原竜也主演の映画『鳩の撃退法』は複数のサブスク動画配信サービスで配信されています。
私がU-NEXTで視聴した時は見放題でしたが、時間が経過するとレンタル扱いになる可能性があるので入会前に公式サイトで事前確認する事を忘れないでください。
サービス名 | 月額料金(税込) | 同時視聴できる端末数 | 無料お試し期間 |
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U-NEXT | 2,189円 | 4台 | 31日間 |
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