一定範囲の同じ空間が連結された異空間で、同じ時間を繰り返すタイムループに陥るホラー映画。
空間の時間は戻るのに、その中にいる人間の時間は進み続けて年齢を重ねていく。
神か悪魔による、何かの実験かな?
『パラドクス』あらすじ
「刑事と犯罪者兄弟」、「車で目的地に向かっている4人家族」の2つのグループがそれぞれ無限に同じ1日を繰り返す異空間に閉じ込められる。
【見どころ】無限ループには法則が存在する!?
- 二組が体験する無限ループが交差しながら物語が進む
- 無限ループには一定の規則性がある
- 無限ループは人を入れ替えながら永遠に続いている可能性が高い
【主要登場人物 / キャスト】俳優名を描くとネタバレになるので省略
感想(ネタバレ含む)監督の人生哲学が盛り込まれている!?
恐ろしい・・・とにかく恐ろしい。
ある日突然に無限ループ空間に閉じ込められてしまった人たちを描いた映画ですが、時間は同じ日を繰り返すのに人間は通常空間と同じように年齢を重ねていく設定。
例えば2023年1月27日が終わると、また2023年1月27日の午前0時から始まる。
しかしその空間に閉じ込められている人間は普通に年を取っていく。
つまり空間の時間は無限ループを続けるのだけど、人間に流れる時間は進み続ける。
さらに恐ろしいのは狭い範囲に閉じ込められてしまうところ。
刑事と犯人兄弟のグループは無限に続く出口のない螺旋階段、4人家族は無限に続く一本道を中心とした半径数百メートルの空間。
最初のループは、刑事マルコが弟オリバー、兄カルロスを追って非常階段に入った時に地震のような現象が起こり、三人は出口のない異空間に閉じ込められてしまう。
9階から1階まで降りたと思ったら、また9階に逆戻り。
試しに下に物を落としてみると、なぜか上から落ちてくる。
この空間は非常階段が無限に繋ぎ合わされた空間という事ですね。
階段の踊り場には各階に扉があるのだけど、もちろん開かない。
一体何が起こっているのかって話ですが、どう考えても神か悪魔の仕業でしょうな。
彼らは神に罰を与えられたのか、それとも悪魔の悪戯の餌食になったか。
本人たちも最初は理解できずにパニックに陥っていたけど、そんな事よりもカルロスがマルコに撃たれて瀕死の状態なのでどうにかしないといけない。
まあ、どうにもならないんですが。
この空間では時間はループするけど、人間の時間は確実に前に進んでいく。
最終的にカルロスは退場となり、その直後は対立関係になっていたオリバーとマルコだけど無限ループという共通の問題を解決するのが先なので結局は協力せざるを得ない。
憎い相手だとしても手を組んだ方が得策な場合は仕方なしだけど協力して、時間が経過するうちに憎しみがだんだん薄れていき友情が育まれる。
そういう人間の心理の変化も監督は描きたかったのかな?
と感じた。
結果的にとんでもない期間を非常階段で過ごす事になるのだけど、弾が残っている銃があるのに使わなかったのが興味深い。
「いつか助かるかも知れない」という希望を捨てていなかったことの裏返しでしょうか。
人生に絶望した人がいて退場できる手段(銃)があるのに使わないのは、その手段が退場を思い留まらせる為の「抑止力」になっているからかも知れない。
「いつでもこの世から退場できるのだから、今使うのは勿体ない」という心理が働いているのかも。
思い留まったのは良いのだけど時間の経過によりオリバーは中年に、マルコは老人になる。
オリバー達は非常階段という縦に続くループだったけど、もう一組は車で走行中に無限ループに陥り、半径数百メートルの横に広がる空間が無限に繋ぎ合わされた場所に閉じ込められてしまった。
家族4人でとある場所に向かっていたのだけど、どれだけ進んでも同じ看板の地点に行き着いてしまう。
空間が広い分だけ非常階段よりはマシだけど、これもキツイですよ。
この空間でも一人の犠牲者が発生してしまう。
そして残された人たちは少年から中年に、中年から老人に年齢を重ねるという非常階段組と同じ運命を辿る。
全ての現象がパズルのように繋がっている
この映画は一度観ただけでは理解が難しいですが、一見無関係な二組の物語も実は繋がっている事が判明します。
空間は同じ1日を繰り返すけど、人間に流れる時間は止まらないところがポイント。
この映画の無限ループには法則があるみたいで、一定期間が経過すると脱出するチャンスが訪れるのだけど事前に究極の選択を迫られる
人間はやっちゃダメと言われても、結局は愚かな道を選択してしまう生き物なのでしょうか。
※年寄り(人生の先輩)の忠告はちゃんと聞かないと・・・
- 今の地獄から抜け出して、新たな地獄に足を踏み入れる。
- 今の地獄で一生を終える。
進むも地獄、留まるも地獄。
選択肢が地獄しか残っていないように見えるけど若者は地獄の中でも希望を捨てずに鍛錬を続け、年寄りは絶望しながら衰えていくだけ。
これも二組の共通事項。
とはいえ、若者が希望を掴めたのかは分からない。
今の地獄から抜け出すころには中年となり、今度は自分が新たな地獄で絶望して衰えていく立場になるというループ。
そして近くには新たな若者の存在が・・・。
この映画は「人生」を無限ループに例えている!?
若い時に努力をして幸せを掴み、中年になり人生の苦さを味わい、最後は絶望してこの世から退場?
監督は「人間は生まれた瞬間から不幸に向かって進んでいる」という思想なのかも。
若者は体験すること全てが新鮮に感じるけど、中年以降になると同じ事の繰り返し。
それをこの映画で表現したかったのでしょうか。
作中では負のループで苦しんでいる自分達とは別次元に生きる自分達が幸せに生きているというような事を言っていたので、幸せのループも存在するのでしょう。
まあ幸せのループを映画にしたところで、面白くはないでしょうけど。
この作品は「面白いけど難しい」といった感じでした。
見応えがあってオススメの作品だけど、グロテスクなシーンもあります。
ところでポスター画像の女性は一体誰?
作中に登場しているそうだけど、分からなかった。
映画『パラドクス』を配信しているサブスク
私は『パラドクス』を「Amazonプライムビデオ(アマプラ)」で視聴しましたが、サブスクは諸事情で映画の配信が停止になる事もあるので、最新の配信情報は入会前に公式サイトで確認するようにしてください。
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