舞台演劇みたいで面白い『三尺魂(さんじゃくだま)』あらすじ・感想 | 死にたくても死ねないタイムループコメディ

あまり知られていない作品だと思いますが、メチャクチャ面白い。

集団自殺を図るために小屋に集合した4人だけど、何度爆発を経験しても死ぬ前に戻ってしまうタイムループ作品。

初対面だった4人がそれぞれの事情を知って徐々に考え方が変化していくのが興味深い。

内容は深刻だけどコメディ要素満載なので気軽に楽しめます。

『三尺魂』の詳細情報
  • 公開年  : 2017年
  • 上映時間 : 1時間 33分
  • 監督   : 加藤悦生
  • キャスト : 村上穂乃佳 / 木ノ本嶺浩 / 辻しのぶ / 津田寛治 ほか

『三尺魂』あらすじ

川沿いの小さな小屋にネット掲示板で知り合った初対面の4人が集合。

彼らはそれぞれに悩みを抱え、この世からの退場を望む者達。
メンバーを見渡してみると大人が3人女子高生が1人という構成。

大人組はまさか未成年が参加するとは思っておらず自分達の事を棚に上げて少女に考えを改めるように促すが、説得むなしく爆破スイッチが押されてしまう。

しかし次の瞬間、気が付くと爆発前の時間に戻っていた。

【見どころ】何度爆発しても退場できないタイムループ

全員が自殺願望を持つ者たちなのに、大人3人が必死で女子高生に生きる事を説く滑稽さが面白い。

そしてそれぞれの事情が明らかになるにつれて、大人たちも他の者から説教される。

【主要登場人物 / キャスト】もはや全員が主役です!

  • 城戸(津田寛治)
    借金を抱え、直径90センチ(三尺玉)の花火でこの世からの退場を考える花火師。
  • 高村(木ノ本嶺浩)
    仕事で自信が持てない研修医。
  • 冬美(辻しのぶ)
    息子を交通事故で失くし心に穴が開いた主婦。
  • 希子(村上穂乃佳)
    学校の人間関係に悩む女子高生。

感想(ネタバレ含む)他人が聞けば小さい悩み

この映画のタイトル『三尺魂』は「さんじゃくだま」と読みます。

ネット掲示板で自殺願望を持つ者たちが意気投合して集団で退場しようという事で小屋に集まるのだけど、なぜか死ねない。

目の前で三尺玉(直径90センチ)の花火が爆発して体が吹き飛んだはずなのに、意識が戻った時には全員が小屋に集合する直前の時間に戻っている。

こうして何度もタイムループを繰り返す訳ですが、大人たちはタイムループを繰り返すだけではなく前回の記憶もそのまま残っていて回数を重ねるごとに蓄積されていきます。

つまり1人の人間だけが不思議な体験をしているのではなく集団でタイムループに陥っていて、全員が時間の牢獄に囚われた状態。

あなたが居なくなれば必ず悲しむ人がいる

大人たちが出した結論は未成年の希子には考えを改めさせて帰宅させて、自分たち3人だけで改めて計画を実行すれば無事に退場できるであろうという事。

この時点で身勝手極まりないですね。
大人のエゴとはまさにこの事。

そりゃ希子も反発して衝動的に爆破スイッチを押しますわ(笑)

仮に希子の説得に成功したとして残りの3人が後で計画通りに退場したと彼女が知ったら、むしろ3人は恨まれるのではないでしょうか。

「私だけを“この世”という地獄に残して、大人たちは身勝手に天国に行きやがった・・・許さん!」
私が希子の立場なら、間違いなくこう考えますね。

タイムループを抜け出すには希子を生かす事という考え自体が恐らく間違っていると思う。

  • 城戸には妻と娘がいる
  • 高村は両親にとって自慢の息子
  • 冬美は息子を失ったけど、がいる
  • 希子には一生懸命育ててくれている義母がいる

誰が退場しても残された人が絶対に悲しみます。

つまり全員が生きなければいけないという事。

自分の事を棚に上げて・・・

それぞれの退場したい事情が明らかになるにつれて、周囲は何でそんな事で命を捨てようとするのかと説教を始めるのだけど、これは完全に「どの口が言うてんねん!」状態です。

「君は生きなきゃだめだよ!」

「ガンバレ!」

おいも
おいも

この人たち、自分の事を棚に上げて言いたい放題・・・

こんな事を書くと本当に悩んでいる当事者に怒られそうですけど、人が死にたいと思う理由って意外と客観的に見たら大した事じゃないですよね。

本人にしてみれば深刻な悩みだけど、他人が聞けば「何でそんな小さな事で!?」と感じる事が多い。

この作品の面白いところは、退場したい者同士が励まし合ってマイナス×マイナスがプラスになるようなイメージでしょうか。

ある意味でセラピー効果が作用してガス抜きが出来ていますね。

やはり心に悩みを溜め込まずに、吐き出す事って大切なんだと思いました。

全員の悩みに共通しているのは、もう一度やり直すことが可能だという事。
退場したいと思っても、普段は立ち寄らない所に旅行に行ったりして気分転換をするだけで不思議と気分が晴れる事が多いと思います。

結局4人全員が生きるべき理由を持っている。
つまり彼らは退場してはいけない人の集団ですよ。

どうせいつかはみんな寿命が尽きるのだから、自分で命の灯を消す必要はない。

おいも
おいも

そもそも巨大花火を地上で爆発なんてさせたら後処理が大変なんだから、その人たちへの迷惑も考えなさいよ!

嫌な事からは逃げても良いと思うけど「あの世」にまで逃てしまうと残された誰かが悲しむし、誰かが迷惑を被ります。
だいたい天国に行けるかどうか定かではないんですよ。

様々な宗教で説かれているのが、自分から命を絶つと天国的な場所へは行けないという教え。
なぜかこの項目だけは共通しているんですよね。

この映画の場合は結末がイイ感じになっていて、穏やかな気分に浸る事ができる良作でした。

監督も脚本家も別の人だけど、何となく『キサラギ』という作品と『三尺魂』の雰囲気が似ている気がします。

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密室劇のような作品としては『大洗にも星は降るなり』も面白いです。

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『三尺魂』を配信しているサブスク

『三尺魂』はあまり知名度の高い映画ではありませんが、サブスク動画配信やDVDレンタルが可能です。

動画配信サービスの入会前に必ず公式サイトで目当ての作品が配信されているか確認してください。

動画配信サービスで観る事ができない作品はレンタルDVDを探してみると見つかる事が多いです。