原作は映画と同タイトルの平野啓一郎による長編小説。
他人に成り済まして生きてきた男が突然亡くなり、残された妻は自分の夫だった男が本当は何者なのかを知るために弁護士に調査を依頼して真相が明らかになっていくという内容です。
謎解きミステリーというよりも、ヒューマンドラマの要素が強い作品です。
『ある男』あらすじ
夫・大佑を不慮の事故で亡くした里枝は、疎遠だった大祐の兄から自分の夫が正体不明の別人であると知らされ、弁護士の城戸に身辺調査を依頼する。
城戸が“謎の男X”の調査を進めていくと、衝撃の事実が判明する。
【見どころ】「本当の自分」と「偽りの自分」
- キャスト全員の演技が素晴らしくて、物語に引き込まれる
- ドラマ性が強い内容で、ミステリー要素は弱い
- ラストの意味深なシーンの考察は視聴者に委ねられるスタイル
【主要登場人物 / キャスト】戸籍ブローカーが不気味過ぎる
感想(ネタバレ含む)ラストシーンはちょっと意味深
映画『ある男』は、良い意味で抑揚が無くて淡々と物語が進んでいきます。
ちなみに原作小説が未読でも何の問題もありません。
この作品は「現在の自分」から「新しい自分」に生まれ変わりたい者が他人に成り済まして生きてきた過程が描かれるのですが、その為に戸籍が悪用されます。
考えてみると戸籍票には住所や氏名などが記載されているけど血液型とかは一切登録されていないから、自分と同年代の人間で性別さえ一致していれば比較的簡単に他人に成り済ます事ができるんですよね。
最近になってようやく顔写真付きのマイナンバーカードが本格運用され始めて様々な情報に紐付けられるようになってきたけど、今まで戸籍が悪用し放題だったのが恐ろしいですね。
しかも自分の戸籍票なんて滅多に目にする事がないから、既に悪用されていても気付きにくいと来たものですよ。
この映画では他人の戸籍を新しい自分に生まれ変わるために利用しているのだけど、仮に戸籍の本当の持ち主が入れ替わりを了承していたとしても、思いっきり犯罪だから絶対にダメです。
現在は昔と比べて戸籍の取り扱いが厳格になったと聞きますが、戸籍売買のブローカーにかかれば法律の目を掻い潜って他人の戸籍を手に入れるなんて簡単な訳ですよ。
そのブローカー役を演じているのが柄本明ですが、不気味な詐欺師として主人公の弁護士(妻夫木聡)を翻弄します。
詐欺師の言っている事だから、そもそも本当なのか嘘なのかも分からない。
目の前の人間(妻夫木聡)の本質を見透かしたような詐欺師の演技にゾッとさせられました。
さすがは大御所俳優・・・関西弁は少し変だったけど(笑)
映画『ある男』には新しい自分になりたい人間が複数登場
谷口大祐を装って生きていた「ある男(窪田正孝)」は、過去の自分を捨て他人の戸籍を入手して成りすまし人生を送ってきた訳ですが、いくら名前を変えても自分に流れている血を変える事はできない。
本人は何も悪くないのに、親から受け継いだ血のせいでずっと悩み続けないといけない。
人間関係をリセットしたければスマホの電話帳を消去したり知らない土地に引っ越す事である程度解決できるけど、心の内面のリセットは難しいですからね。
この映画の興味深いところは、新しい自分になりたい人間が複数いるという部分。
実はラストシーンでもう一人の生まれ変わり願望を持つ人物が描かれるシーンがあるのですが、この人は一体どのレベルの成り済ましだったのか謎のまま終了してしまいます。
いわゆる観た者に考察を委ねるタイプの終わり方なのですが、私の見解では彼は今の生活を破壊するつもりはなくチョットしたお遊びで他人を装っただけなのだろうと思っています。
本気で別の人生を歩みたいとは考えていないはず。
それはそうと、温泉旅館の次男坊は他人の戸籍に乗り換えてまで自分という人間を変えないといけない何かがあったのでしょうか?
兄が非常に面倒な男だというのは理解できるけど、他の理由が描かれずにこの点は消化不良だった。
あの兄からは確かに距離を取りたくなる気持ちはわかるけど、本当の理由は何なのでしょうね。
もしかして例の戸籍ブローカーの巧みな話術で言いくるめられて、催眠術にかかったようになって戸籍交換しちゃったのかな?
映画『ある男』を配信しているサブスク
日本映画『ある男』は複数のサブスクで配信されていますが、見放題対象とレンタル作品の違いがあるので入会前に公式サイトで最新の配信状況をチェックしてください。
サービス名 | 月額料金(税込) | 同時視聴できる端末数 | 無料お試し期間 |
---|---|---|---|
U-NEXT | 2,189円 | 4台 | 31日間 |
Hulu | 1,026円 | 4台 | ✕ |
Amazonプライム | 600円 | 3台 | 30日間 |
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